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痩せ枝や 花尾踏みしめ いくとせを
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冨嘉記2011/12/04


 街を歩いているとろくなことがない。とくに日中はそうだ。昔日の姿とそこから派生して現在に至る俺の骨や皮まで透き通して、街行く人は見据えていく。俺は辛抱たまらず日陰を歩く。日陰をシェルターだと思う自分に辟易する。どこにも隠れ場所などないのだ。ただひとつ夜の闇以外には。今日は女を見かけた。女が歩いていた。人も疎らな街の道中で、女は男と歩いていた。その女は俺がかつて好きだと思っていた女だ。女が男と歩いていた。俺は街路樹を挟むように歩き、身を縮めて、サングラス越しに二人を凝視した。

 人間には接近許容距離というものがある。親しさに応じて、相手が自分のどこまで近づいても不快にならないかの数値だ。それには一種の権威が与えられている。俺は彼女と接している間、どこまで接近を許されたか考えた。せいぜい1mだろう。これは女性にとっては他人の距離だ。では目の前の男女はどうだ。女の右手と男の左手は掌を合わせる形でしっかりと結ばれていた。距離にしてゼロ、ゼロセンチメートル。この距離の指し示す親しさは説明するまでもない。俺は吐き気を堪えながらその場を逃げるように去った。

 帰ってきてから甘い甘いコーヒーを飲む。ブラックコーヒーをいれることができる準備は俺の部屋にない。部屋のどこからゴキブリが発生しても可笑しくないごたつきの中、冷蔵庫の中身は半分が腐敗臭を漂わせている。俺はこの部屋にいるのが耐えがたく思う。俺はいつだって、手持ち無沙汰になると看板を作る。今日も看板を作ろうと思った。しかし金が無い。立ち上がる権利さえ与えられていない。俺には仕事もない。首になって久しい。俺には金が無い。底に穴の空いた靴、その代わりを買う金さえない。


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ィヤンキー・ジャーナル2011/11/28


湿気ったラッキーストライクを誰に託そうかと悩みながら、右手でライターをいじくり回す。僕はこのライターを使うときが来るのだろうか。これっきりになったとしたら、このライターの居場所はどこになるのだろうか。

密封の瓶の中では刻み煙草、そしてマッチ箱が静かに眠っている。煙管は時折アルコールで拭いているが、使われていない感は否めない。酒はもう一ヶ月飲んでいなかった。娯楽という娯楽に対して、私は鈍感であった。人が執着するであろう娯楽に執着しなかった。

合法ドラッグにも手を出した。三回吸った。依存はしなかった。ただ、抜けた後の焦燥感と心臓の痛みだけが苦痛だった。何一つとして楽しいことはなかった。先月、件の合法ドラッグは薬事法改正で規制対象となったらしい。僕はお札をどぶに捨てる思いで乾いた草をトイレに流した。

私はずっと「人間が好きなのだ」と言い続けてきた。それはかっこうをつけていただけだった。本当は他人が何を考えているかなんてわからないし、自分の意図しないところで僕の発言を曲解して、勝手に怒って僕の下を去っていく。そんなことばかりだった。僕は人間なんて好きじゃなかった。

今になって思うと、それは極めて小さなコミュニティの中の話だった。僕はレスラーたちを見て思う。鈴木みのる、船木誠勝、大森隆男、ジョン・シナやCMパンクを見ても思う。物語は作られていくのではなく、発生するものなんだ。だとすれば、人生とは物語なのだ。

そう考えた時、僕ははじめて「人間が好きなのだ」と、ようやく自分の言葉で言えるような気がしたのだ。



以上。

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冨嘉記2011/11/24


目覚めとともに襲ってくるのは部屋に飛び交う羽虫ではない。強烈なネガティブだ。考えて見れば当然だ。どうせ俺のような人間はベッドで安らかに死ぬことはできない。ここは俺の魂が存在してはならない場所なんだ。わかっている。俺は行きつけの店に行き腹を満たそうと思った。閉まっていた。店じまいしたらしい。ここの店主には家族があったはずだ。高校生の娘もいたはずだ。この家族はどうするのだろうか。かつての笑顔の絶えない店にはもう永遠に足を踏み入れられない。

部屋の中のごたつきのなかで俺は考える。目の前でレスラーの引退試合を流していた。酷く退屈な試合だ。打撃の一つ一つが場当たり的で、とても金の取れる試合ではない。しかし俺はこのレスラーの試合を何十回と見続けてきた。頭の中には入らないし、娯楽にもならなかったが、目は離せなかった。この男は何を考えて生きてきたのだろう。20年も身体中を傷だらけにして、この男の一回しかない生涯は幸せだったのだろうか。幸せだったのだろう。引退試合を迎えられたのだから。

ニコ生をした。その日は珍しく人がきた。複数人来た。体調不良明けの放送だったので、見慣れた名前はいなかった。俺は身の上を話す、視聴者は総じて口を揃えてこういった。「お前は精神異常者だ」。わかっていたつもりだったが、自分がアスペルガーなどと考えたこともなかった。しかし、曰く知識が豊富らしい彼らが言うには、俺は典型らしい。「すぐにでも医者に行け」とも言われた。「入院して一生出てくるな」とも言われた。「犯罪者予備軍」とも言われた。俺は頭の先から喉、胃、臍にかけてすっと熱が引き冷静になっていくのを感じた。

俺が気付いた時にはベッドにいた。羽虫も飛んでいなかった。軽快なメロディで携帯電話がメールの着信を知らせていた。時間は夕方前だった。昨晩いつ眠ったのか覚えていない。酒はもう一ヶ月断っていた。薬も飲んでいない。昨晩の記憶はやはりなかった。パソコンを開いて確認したが、俺はもう一ヶ月ほどニコ生をしていなかった。外出したら、閉店していた店は開いていた。俺はまた同じレスラーの引退試合を見ている。俺には俺が何者であるのかわからない。窓の外には俺の部屋の窓ガラス目掛けて放水する男たちがいる。風切り音のような笛の音が常に聞こえる。水の音と風の音が止まない。ポストを見るために部屋を出ると、アパートの俺の部屋の扉にビニールが貼られていた。



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冨嘉記2011/11/22

 今日、銀行のATMの前でネズミが死んでいた。死骸の半身は踏みつぶされて平たくなっていた。実態のない金を動かすために訪れた小綺麗な革靴を薄汚い子ネズミの血が犯したのだ。俺はそれだけで胸がすく思いがする。

 誰だって他人のことに一から十まで注目することなどできない。人は自分が思っている以上に他人にとってはどうでもいい存在だ。それでもなお、これから腐っていくだけの子ネズミがその生命の終わりに値札のついた死骸に血潮を塗りたくったのがたまらなく愉快だ。

 そのネズミは何もできなかった、子も産まず誰も愛さなかった。だが俺たちはやるべきことをやった。正義であろうと肩肘を張って人並みの生産をすることが世間の常道だとしても、俺たちは正義になれないなら正義になろうとは思わない。

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「ユッケ」とはなんだったのか


 思い出話でもしましょうか。

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[……それから……]
すてきな報酬をいただきました。


 先日をうけての今日の話です。

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[……それから……]
一区切り


なんだかんだで結局なんとか「ならなかった」話です。


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[……それから……]
死ぬまでにやらなければならないことってなんなんだろうね、此礼木くん


 生きているだけで貶まれるなんてっ、みたいな風に悲劇調に語るのは勝手として、しかし実のところそういうことの原因は全部自分にあるってのがたいていの場合ですよ

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[……それから……]
フードコートでロイヤルランブルしたい


 底抜けに緊張感の無い記事です。

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[……それから……]
人生終了のお知らせ


ふえぇ

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[……それから……]
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