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「白笑」 深沢七郎


深沢七郎という作家の読解を試みる。

予定としては、「梗概」、「感想」の二部に分けて記述し、深沢七郎の諸作品への所感を述べる。

第一回は「白笑」。深沢七郎全集第一巻の第一作品目、デビュー前のものである。

頼むよぉ、三日坊主にならないでよぉ・・・?
【梗概】
 源造の家の前には激しい傾斜を流れる小川があり、水音が騒々しかった。源造の家には大きな山柿の木があった。一方小川の向こうの三太郎の家にも大きな柿の木があり、こちらはよく実をつけた。三太郎の家には忠太郎という道楽息子がおり、近々結婚するという。忠太郎は無鉄砲な性質で、喧嘩を引き受けたり金遣いが荒かったりと散々だった。早いところ結婚させ、おちつかせようという三太郎の魂胆だったが、忠太郎は「年上の女となんか」と口ではいいながら、どこか絶対に断るという風でもなかった。
 花嫁であるおきくの荷物が着々と忠太郎のもとに届くのを、源造はあてつけのように感じていた。妻の鈴子はおきくの荷物がいかにたくさんであるかをまくしたてた。そんな中、源造夫婦が話をしていると、隣村に住む源造の若いころからの遊び仲間である男が訪ねてきた。その男は源造とおきくの間に昔、肉体関係があったことを暴露してしまう。源造の妻は三太郎の家に対して優越感を得た喜びのほうが勝り、おかしそうに笑った。この秘密はすでに男によって村人の間に流れてしまっており、花嫁仕度が立派であったことに何かしらケチをつけたがっていた心とつながり、噂は村中に広がっていった。知らないのは三太郎一家だけである。
 おきくは言いふらされていることも知らずにやってきた。おきくは柿の木を見ると源造のことが思い出されて恥ずかしいような恐ろしいような気持ちになった。源造はしゃべらないだろうし、証拠がないと言い聞かせ、むしろ年下の怠け者の忠太郎よりも源造のほうが相談相手になってくれるだろうと期待までしていた。
 新郎新婦が一堂に会し、酒の席になった。源造もこの席に招かれていた。酒がまわると緊張していた空気が一変したが、源造は陽気にはなれなかった。その席で些細な勘違いが生じ、おせっかいやきの留さんという男が三太郎家で源造とおきくの関係を叫んでしまう。
 翌日、忠太郎は結婚解消を叫ぶ。両家の近親者を集め、通夜のような雰囲気の中で忠太郎は「花嫁が処女でなかった」ということを理由とし、啖呵を切るように激昂する。両家の親類が混乱する中、問い詰められたおきくは「うそですよ」と力を込めて言った。三太郎はこれ幸いと、村の人間が花嫁仕度の豪華さやうちの柿の木をねたんでいったのだ、といった。
 忠太郎はひとまず納得したようだったが、源造の酒の席での言動からどうにもわだかまりがあった。三太郎は忠太郎に夕飯の席で酒を初めて進めた。その翌朝では三太郎は庭を掃きながらおきくに忠太郎と肉体関係を結んだかをしつこく問うた。そのころから忠太郎は毎日酒にのまれるようになり、遊びにばかりふけってますます怠けていく。
 ある日、忠太郎は農村慰安の演芸会の仕度をしていた。三太郎は妻とおきくに、忠太郎が一生懸命に仕度をしている会なので見に行くようにといった。そんな中、忠太郎は飛び入りでろくに練習もしていない踊りと歌を歌い始める。ひどく酔っ払っていた。おきくは恥ずかしくなり、姑の手をつかんでさっさと帰ってしまう。忠太郎はその後おはまという有名な淫乱後家の家の前で眠っていた。実家に連れ帰られた忠太郎は意識を取り戻し、さらに源造とおきくの関係について怪しい怪しいとわめく。おきくはそんな日々が続くのかと不安がり、話してしまった源造がうらめしく思えてきた。おきくは源造に「あのことは嘘だ」と言ってもらおうと、夜中に源造の家を訪ねる。源造の妻をも攻め立てるようにするおきくは、三太郎家の柿の下まで源造を引っ張り、そこで源造になぜ話したのかを問い詰める。源造はそこでおきくに、言いふらしたのは別の人だということを告げる。そう言われたとたん、お菊は源造も苦しんでいるのだと悟り、同情する。三太郎は源造が夜更けに来たことを知ると、忠太郎を起こそうとする。しかし忠太郎は聞く耳を持たない。源造は三太郎夫婦には嘘だと言い、その場を去る。おきくは源造の背中を見てやさしい、人のよいように思えた。
 その翌日も忠太郎は深酒をした。おきくはどうしてこんな男のところに嫁に来てしまったのかとため息をつく。忠太郎はいうことをきかない子供だが、昨夜の源造はおきくの言うとおりになってくれた。急におきくは源造の顔をみたくなり、源蔵の家へと向かう。昨夜と違い、おきくの顔には笑みが浮かんでいた。おきくは「家へ帰ってしまおうかと思う」と相談する。源造は困惑するが、おきくは源造のせいなのだ、と押しつけるようにする。源造は地面に座り込み、手をついて謝る。おきくは、おきくから逃れようとしているような源造のそぶりに失望を感じる。おきくの顔に笑みが浮かんだ。
 数日後、おきくはひとりで笛吹川を渡る。実家へ帰る最中である。「ふーん」とおきくは忠太郎の顔を思い出して笑う。目から涙がこぼれているが、お菊の口からは唸るような笑う声が漏れていた。

【感想メモ】
 三人称。登場人物のだれに対しても同情的ではない気がするが、強いて言えば視点は前半が源造、後半からはおきくという変化がある。基本的に一本道で話が進んでいるように思う。しかし演芸会のシーンは若干寄り道感がある。ここで作者が意図しているのはなんだろう。忠太郎の酒に酔った勢いでの結婚に対する漠然とした幸せを描いているようにも思うが、心底源造とおきくの関係を怪しんでいる以上、その可能性は低いか。キーワードになるか定かではないが、作中にて一度だけ「男女同権」という言葉が使われている。おきくの家が三太郎家を裕福と見込んでおきくを嫁に出している下りや、三太郎が忠太郎の放蕩癖への足かせとして花嫁をとろうとしている、古臭い構図の中にふと見えるおきくの意識は、どこか時代的なずれがあるのでは。時代考証としては戦前ぎりぎりの昭和のようなイメージがあるが、詳しくは触れられていなかったように記憶している。おきくがどこか惚れっぽい印象を受けるが、無責任な立場の揺れるおきくに焦点を当て、前半でスポットライトがあたっていた源造に失望する、というラストシーンの構図は、なんだか理不尽ささえ感じる。ラストの源造を「白笑(うすらわらい)」するおきく、というシーンは作者の意図があるのは間違いない。しかしその意図は読み解けなかった。





これだけ書くのにちょうど1時間かぁ・・・ 全集が10巻あって、たとえば第一巻が14作収録だから・・・


はぁ、なんだか先が思いやられる。なんとか6月中には終えたいんだけれど・・・




以上。

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